2012年7月28日土曜日

出演者 乾直樹さんについて。

今回の男性出演者2人目は
乾直樹さん、通称いぬぱん。






















作品に出演していただくのも一緒に踊るのも、今回初めてです。

今まで日本でいぬぱんが踊っている所は何度も目にしてまいりましたが、
じつは一度も接点がなく、
いぬぱんが在外研修員としてNYで研修中、私もお世話になっていた
Nathan Triceという振付家の作品にいぬぱんが出演していたという所から、
私の中で一気に距離が縮まったように感じたわけです。

また、前回の705カンパニー公演にそのNathanも出演してくれていたので、
いぬぱんはお手伝いにも来てくれたりしておりました。

そして今回出演依頼をいぬぱんにした際、
リハーサル回数のこと、出演料のことなどもろもろを
いぬぱんが自分の状況をちゃんと把握した上でよく考えて返事をくれて、
その実直な姿勢に、「ああ、本当に誠実に向かってくれる人だな」と
やりとりだけで既に感じておりました。

出演が正式に決まった際には、「全身全霊で挑みます」とのお返事。
どんなけその時私が心強い気持ちになったことかと、今でも有り難く思ってます。


さて今作の第1回目のリハは、「Human」と名付けているシーンからでした。
このシーンは、私にとって新しい試み。


しかもダンサー達の所作によって、いいものになるかどうかも、
大きく分かれてしまう難しいシーンです。
表したい事も大変偏った世界観なので、理解して各自消化してもらわないと、
陳腐なものになってしまう可能性があります。
しかも時間的にも長めなので大変集中力が必要です。


そしてそのシーンを大きく担っているのがいぬぱん。


最初のリハで、私がやりたいことをいぬぱんに伝えて具体的に動いてもらった時、
思わず、「あああああああ!いぬぱんに頼んで良かったよ!!!!」と
すでに言葉にしておりました。


「本番が終わった際にも尚子さんに同じ事を言ってもらえるよう、がんばります」
そんなコメントを返してくるいぬぱん。


ダンスシーンも、一生懸命練習をしてくれて、
リハーサルでは誠実な態度で、終始参加してくれて、
そして、何よりもいい動きをするいぬぱん。

私は全世界中の振付家に大声で言いたい。
「いぬぱん、いいでっせーーーーー!!!」


そんなパーフェクトに見えるいぬぱん。
一応自分が思ういぬぱんへのダンスアドバイスも伝えつつ
リハーサルをしております。

それを本番までどう消化してきてくれるか。
偉そうな言い方になっちゃうけど、
そこが今回いぬぱんが私の作品に出た意味になるのではないかなと、
個人的に思っております。


そんな大人ないぬぱんもお楽しみに。

705/菊地







1 件のコメント:

  1. 菊地尚子というダンサーを初めて目にしたのはいつだろう。そんなことを最近考えていた。はっきりわからないけれど、その時に鮮烈な印象を受けたのは間違いないと思う。
    「体はグネグネなのに、なんなんだあの人の目的地へ向かうまっすぐさは!」そんなことを感じたかもしれない。

    ブログにも書いて頂いたように、僕が在外研修員としてニューヨークで一年間研修しているとき、 Nathan Trice という振付家とワークし、よく作品に出させていただいていた。そこで一緒にやっていたりょうじくんと、まきこちゃん(前回の「祝祭」にも出演していたお二人)によく聞いていたのが、Nathan が今でも尚子さんのこと本当に絶賛しているということである。
    また、僕が705の旗揚げ公演を観に行った時、彼女への衝撃が、感動に変わったのはっきり覚えている。僕は胸中で勝手に叫んでいた。「菊地尚子は日本を代表するダンサーだ!! 」。多分その時から僕は菊地尚子の隠れファンになっていたんだと思う。
    そして今回その尚子さんから出演の依頼をいただいたときは驚いた。しかし、今の自分の生活スタイルや経済的なことを考えた上できちんと相談してから、正式に返事をしようと思い、今抱えている状況を素直に尚子さんに話した。日本ではギャラのことを話するのは、なんとなくタブーのイメージがあるが、本気で臨むのならばその作家に失礼のないようにまた自分が、その公演においての責任を自分自身に対して示すためにも、僕はとても大事なことだと思っている。とはいっても、正直その交渉を尚子さんにした時、「なんてうぬぼれたダンサーなんだ。」と思われるのが心配だった。しかし、その相談に対する尚子さんの返事は「すべて、了解です。なんとしてもいぬぱんに出てもらいたいのです!」でした。その時に改めて思った。引き受けるからには、命がけでやらないとこの人の理想におっ付けない。僕が菊地尚子というダンサーを見て初めて思った「まっすぐさ」というのが何年もわたって、しっかり結びついた瞬間だった。
    リハーサルが始まり、改めてその第一印象が的中していたことをまざまざと見せられた。「なんというこだわり!」もちろん、尚子さんの中でも迷いはたくさんあって試行錯誤を繰り返しているが、心の奥底にある揺るがないもの、その強さに作家としてのとても大切なものを教えていただいている気がする。確かにリハーサルはきつい。自分が今まで体に染み付いてきたものをいかに払拭し新たな自分に生まれ変わるか。言葉で書くと簡単だが、この作業というのは非常に苦労する。
    しかし、この公演を終えたときに、自分の中には、きっと何か今までになかったナニカの、かけらが、残っている。そんな気がしている。その期待を、自覚したとき、表現者は何物にも代え難い喜びを感じる。そして、その感覚を、味わわせて頂いている菊地尚子始め、関係者の皆々様に、感謝をせずには、いられないのである。

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